【実習生のお知らせ】

8月29〜31日(3日間)

東京医科大学医学部生が当院にて実習生として来院しておりました。

診療だけでなく、来院から診察、検査までの導線の流れなど熱心に勉強されてました!お疲れ様です!

内視鏡検査に関する『よくあるご質問』③

先日の取材、「あさイチ」(NHK総合)さんでお話した内容をより詳しく、また、内視鏡検査に関する『よくあるご質問』をまとめました。ぜひご参照ください。

 

Q 「大腸内視鏡、症状がないのでやらなくていいと思うのですが?」

A 症状がないからやらなくていいと思っている人が多いですが、がんは症状が出てからでは手遅れのことが多いです。大腸がんの場合、出血や便が細くなるといった症状がありますが、このような症状は進行大腸がんの症状です。根治が可能な早期がんは症状が全くないことがほとんどです。症状がないというのは大変進行したがんがないという目安にはなりますが、早期がんがないという根拠にはなりませんので、症状がないから検査をしなくていいという考えには大きな問題があります。

がん検診は症状が出る前がチャンスです。一定の年齢が来たらやった方が良いです。

 

Q 「いつから大腸内視鏡をやったら良いでしょうか?」

A 日本には大腸内視鏡を公的検診で受けられるシステムはまだありませんが、米国、英国(NHS Bowel cancer screening)にはあります。米国では50歳、英国では55歳で大腸内視鏡を受けることができますが、45歳から検診を受けることが米国がん学会で推奨されています[4]。大腸がんの家族歴がある人はその家族が大腸がんになった年より10歳若い時点で検診を受けた方が良いともされています。

図に当院で前がんポリープである腺腫が発見される確率を年代、性別に示しました[6]。大腸腺腫は年齢と共に発見される確率が上がります。腺腫を内視鏡の際に取り除くことで大腸癌を予防することができます[1-3]。40歳代で4割の方に腺腫が発見されていますので、私共は40歳から大腸内視鏡を受けるよう推奨しています。また、30歳代でも2割以上の方が腺腫を持っています。生涯で大腸がんになる人は男性で10%、女性で7%です。30歳代から腺腫を持っている2割の方は将来大腸がんになる可能性が高いと考えられます。そのため、私は、大腸がんの家族がいる方はがんの危険が高いので、30歳代から大腸内視鏡をやった方がいいと考えています。

 

 

日本の大腸内視鏡

参考文献:

[1] Winawer SJ, Zauber AG, Ho MN, O’Brien MJ, Gottlieb LS, Sternberg SS, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. The New England journal of medicine. 1993;329:1977-81.

[2] Zauber AG, Winawer SJ, O’Brien MJ, Lansdorp-Vogelaar I, van Ballegooijen M, Hankey BF, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. The New England journal of medicine. 2012;366:687-96.

[3] Nishihara R, Wu K, Lochhead P, Morikawa T, Liao X, Qian ZR, et al. Long-term colorectal-cancer incidence and mortality after lower endoscopy. The New England journal of medicine. 2013;369:1095-105.

[4] Wolf AMD, Fontham ETH, Church TR, Flowers CR, Guerra CE, LaMonte SJ, et al. Colorectal cancer screening for average-risk adults: 2018 guideline update from the American Cancer Society. CA: A Cancer Journal for Clinicians. 2018;68:250-81.

[6] 豊島 治, 西澤 俊, 崎谷 康, 高橋 由, 吉田 俊. 無床施設でのポリープ摘除の実際(2)無床施設でのポリープの取り扱い 大腸内視鏡検査の質向上のための工夫. 臨牀消化器内科. 2019;34:1155-9.

内視鏡検査に関する『よくあるご質問』②

先日の取材、「あさイチ」(NHK総合)さんでお話した内容をより詳しく、また、内視鏡検査に関する『よくあるご質問』をまとめました。ぜひご参照ください。

 

Q 大腸内視鏡検査は、うまい先生にやってもらったほうが痛くない!と聞いたことがあるんですが、本当ですか?

A その通りです。大腸内視鏡は大腸の奥までスコープを入れるのが、慣れていないと難しいですので、上手い内視鏡医にやってもらった方が痛くないです。

但し、上手い内視鏡医がやっても、腸が伸びてしまう人や、狭くなっている人、敏感な人は鎮静をしないと痛いです。鎮静も含めて、痛みを減らしてもらうといいです。

1万例以上の大腸内視鏡の経験があると、相当上手だと思います。(参考:院長は3万件以上です)

痛みがないことはとても大事ですが、きちんと病気を見つけるといった点を大事にしている内視鏡医が本当にうまい内視鏡医です。(ここ大事です!)

 

Q 「大腸内視鏡の知識がないです。やる必要性やメリットが分からないです。」

A 大腸内視鏡は大腸がんを発見するだけでなく早期がんであれば内視鏡で摘除することが可能です。また、大腸がんは良性のポリープががん化して発生することがほとんどですが、大腸内視鏡はこのがん化する前のポリープを発見し、摘除することができます。こうすることにより多くの大腸がんは予防できることが証明されています[1-3]。よって、大腸内視鏡は大腸がんを発見、治療、予防することができる素晴らしい検査なのです。

大腸がんは、日本では、なる人の一番多いがんです。なくなる方も肺がんに次いで2番目に多いです。女性に限ると、なるがんの中では乳癌に続き2番目に多いがんであり、なくなる人の中では1番多いがんです(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)。女性にとっても男性にとっても大腸がんは重要な位置を占めています。

がん羅漢数

がん死亡数

WHOの国際がん研究期機関(IARC)の情報によると、表のように、日本の大腸がん死亡率(全年齢、年齢調整)は2000年には男女ともに米国より高くなっています。米国では今世紀初頭の10年で30%の大腸がん罹患率減少を達成しており、米国の大腸がん死が減った主な理由は検診による前がんポリープの摘除、あるいは、がんの早期発見のためと報告されています[4]。米国では、大腸がん検診に直接大腸内視鏡をやる選択肢が含まれており、また、50歳以上の6割が受診しています。一方、日本では便潜血検査のみが行われており、受診率は4割にとどまります。このような差が、日本では大腸がんでなくなる方が多いことの原因となっている可能性があります。米国では、大腸がんは、以前は富裕層に多かったが、最近は検診受診率の低い貧困層に多い病気になっているとも指摘されています[5]。

大腸内視鏡の大切さがわかります。

日米大腸がん死亡率

(豊島. 内視鏡スクリーニングPractice & Atlas, 南江堂より作成)

参考文献:

[1] Winawer SJ, Zauber AG, Ho MN, O’Brien MJ, Gottlieb LS, Sternberg SS, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. The New England journal of medicine. 1993;329:1977-81.

[2] Zauber AG, Winawer SJ, O’Brien MJ, Lansdorp-Vogelaar I, van Ballegooijen M, Hankey BF, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. The New England journal of medicine. 2012;366:687-96.

[3] Nishihara R, Wu K, Lochhead P, Morikawa T, Liao X, Qian ZR, et al. Long-term colorectal-cancer incidence and mortality after lower endoscopy. The New England journal of medicine. 2013;369:1095-105.

[4] Wolf AMD, Fontham ETH, Church TR, Flowers CR, Guerra CE, LaMonte SJ, et al. Colorectal cancer screening for average-risk adults: 2018 guideline update from the American Cancer Society. CA: A Cancer Journal for Clinicians. 2018;68:250-81.

[5] Siegel RL, Miller KD, Jemal A. Cancer statistics, 2019. CA: A Cancer Journal for Clinicians. 2019;69:7-34.