腺腫発見率と大腸癌・死亡のリスク

腺腫発見率と大腸癌・死亡のリスク

この度、2014年4月のNew England Journal of Medicineで大腸内視鏡における大腸腺腫発見率(ADR)の高い医師は大腸癌発生の危険をより確実に減らしている。さらに、大腸癌による死亡も減らしているということが報告されました。当院の大腸腺腫発見率(ADR)は51.2%とこの論文中の最高の群に属します。スクリーニングだけを目的としていないため正確なところは分かりませんが、50歳以上に限れば62.2%と最も高いADRを誇っております。大腸腺腫発見率を高める工夫として当院では全結腸色素内視鏡法を採用しております。この報告により、これまで、丁寧に観察し腺腫を見逃しなく拾い上げていた努力が報われました。今後も大腸癌の見逃しの少ない、大腸癌をより効率的に予防する大腸内視鏡を提供して参ります。

Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death
「腺腫発見率と大腸癌・死亡のリスク」
著者Corley DAら
2014年4月
New England Journal of Medicine
【背景】
スクリーニング大腸内視鏡検査で 1 個以上の腺腫が発見される割合(腺腫発見率:ADR)は,大腸内視鏡のqualityの指標とされている(Kaminski N Engl J Med 2010)。しかし、腺腫発見率と、見逃し大腸癌(interval cancer)のリスク、死亡リスクとの関連性についてはほとんど明らかにされていない。
【方法】
integrated health care delivery organizationのデータを用いて、腺腫発見率(ADR)と、大腸内視鏡検査から 6 ヵ月~10 年後に大腸癌が診断されるリスクおよび大腸癌関連死亡リスクとの関連を評価した。Cox 回帰により,寄与リスクの推定値を,患者の人口統計学的特性,大腸内視鏡検査の適応,併存疾患について補正した。
【結果】
消化器専門医 136 人が行った大腸内視鏡検査 314,872 件を評価した。腺腫発見率(ADR)は 7.4~52.5%であった。追跡期間に,進行期癌 255 例を含む見逃し大腸腺癌(interval cancer) 712 例と、見逃し大腸癌(interval cancer)による死亡 147 例が同定された。腺腫発見率(ADR)の五分位群別にみた未補正の見逃し大腸癌(interval cancer)のリスクは,腺腫発見率(ADR)が最低の群から腺腫発見率が最高の群でそれぞれ追跡 10,000 人年あたり 9.8 例,8.6 例,8.0 例,7.0 例,4.8 例であった。腺腫発見率(ADR)が最高の医師の患者の,腺腫発見率が最低の医師の患者と比較した補正ハザード比は,見逃し大腸癌(interval cancer)が 0.52(95%信頼区間 [CI] 0.39~0.69)、進行期の見逃し大腸癌(interval cancer)が 0.43(95% CI 0.29~0.64)、致死的な見逃し大腸癌(interval cancer)が 0.38(95% CI 0.22~0.65)であった。腺腫発見率(ADR)が 1.0%上昇する毎に、癌のリスクは 3.0%低下した(ハザード比 0.97,95% CI 0.96~0.98)。
【結論】
腺腫発見率(ADR)と、見逃し大腸癌(interval cancer)、進行期の見逃し大腸癌(interval cancer)、致死的な見逃し大腸癌(interval cancer)のリスクとの間に、負の相関が認められた。(Kaiser Permanente Community Benefit program とthe National Cancer Instituteから研究助成を受けた.)南江堂の翻訳を改編致しました。