手術数でわかるいい病院2013―全国&都道府県別ランキング(週刊朝日ムック) 掲載記事

手術数でわかるいい病院2013―全国&都道府県別ランキング(週刊朝日ムック) 掲載記事

とよしまクリニック 豊島治
 ~精度が高く、苦痛の少ない「患者にやさしい内視鏡」を目指す~

◎早期発見で増える低侵襲治療の選択
 とよしまクリニックの豊島治院長は「患者にやさしい内視鏡」を目指している。進行すれば命に関わる大腸がんや胃がんも、内視鏡検査によって早期に発見できれば助かる可能性が高まる。また、早く発見すれば発見するほど、より低侵襲な治療法を選択できる。たとえば、大腸がんを内視鏡検査で発見した場合、小さながんであればそのまま内視鏡手術で切除することができる。さらに、悪性化するとがんになる「腺腫」というポリープを取り除けば、将来の大腸がんリスクを軽減させられる。同クリニックでは、こうした手術を日帰りで行っている。
 もちろん、内視鏡検査でがんを見つけたものの、あらためて手術が必要になるケースはある。そのような場合でも、発見が早ければ開腹手術に比べて侵襲が少ない腹腔鏡手術を行うなど、選択の幅が広がるのである。

◎苦痛の少ない内視鏡検査のために
 「やさしい内視鏡」を実現する上で、患者の苦痛をどのように軽減するかは重要な問題だ。同クリニックでは、鎮静剤を注射して眠っているのに近い状態で検査を行う「セデーション内視鏡」を採用している。この方法は、胃と大腸、どちらの内視鏡検査にも用いられる。豊島院長によれば、患者の感じる苦痛を適切に軽減することは、検査の精度向上につながるのだという。
 「検査中に患者様が痛みを感じていると、検査を早く終わらせることを考えなくてはなりません。セデーション内視鏡なら、ゆっくり丁寧に検査をすすめることができ、精度も高まると考えております。」

◎精度の高い内視鏡検査とは
 豊島院長が最も重要とするのは、内視鏡検査の精度である。同院では、ハイビジョンシステム、NBIシステムなどの最新機器を導入し、精度の向上に努めている。加えて、評価の定まった学説をもとに治療を進めることが大切だという。豊島院長は出典を示しつつ、精度を向上させるための考え方を述べた。
「大腸がんの多くは大腸腺腫から発生するため、大腸腺腫の切除は大腸がんを予防して大腸がんによる死亡を減らします(NEJM1993.2012)。また、腺腫発見率の高い大腸内視鏡検査においては、大腸がんの見逃しも少ないとされています(NEJM2010)。」そのためには、挿入時間を短縮し、観察に時間を割いた上で(NEJM2006)、色素を散布して腫瘍性病変の発見率を向上させる(Gut2011)ことが大切です。便潜血検査は大腸内視鏡検査とともに大腸がんの発見に有用です(NEJM2012)。2つの検査を組み合わせて定期的に検査を受けていただくのがよいでしょう。当クリニックでは、大学病院から経験豊富な医師を招き、質の高い医療の提供を目指しています。痛みのない、精度の高い内視鏡検査で胃がん・大腸がんを早期に発見することが私たちの使命です。また、手術が必要な場合には、普段から当クリニックで診療している先生の病院を紹介し、患者様の精神的な負担の軽減に努めています。」

※大腸がんの早期発見  金沢孝満先生
「大腸がんを早期に発見するには症状がでてからではなく、検診を受けることが大切です。大腸がんの検診には便潜血検査と大腸内視鏡検査の2種類があります。便潜血検査は体への負担が少なく受けられます。早期がんを見逃すことがあります。内視鏡検査はがんを見逃す可能性が低く、早期がんであればその場で治療も可能なことがありますが、前処置が必要で、時間やコストがかかります。大腸がんを早期発見するには、二つの検査を組み合わせ、定期的に検診を受けるのが宜しいでしょう。大腸がんを発症する原因はまだ明確になっておりませんが、肥満、肉食多い、運動不足、飲酒、喫煙、ストレス、大腸がんを発症した家族がいる、40歳以上の人、において大腸がんのリスクが高まるので、そのような方は注意が必要です。」

※胃がんとピロリ菌  山下裕玄先生
「ピロリ菌は胃がんの発がんに深く関与しております。幼少時に家庭内で感染した後、慢性胃炎となった場合、萎縮性胃炎を起こし、その程度が進行すると徐々に胃がんになりやすくなります。胃がんになりやすい人を判別し、それらの人を特に注意深く内視鏡で観察をすることが胃がんの早期発見には大切です。胃がんのなりやすさは萎縮性胃炎の程度や腸皮化生といった内視鏡所見やピロリ菌感染の有無、ペプシノゲンなどから推測します。ピロリ菌を除菌することは胃がんを予防する効果があるのみならず、がんを早期に発見しやすくするといったメリットもあります。ただし、除菌後も胃がんの発生は少なくはないため、定期的に検診は必要です。」

※増えている逆流食道炎  吉田俊太郎先生
「胃液が食道に逆流して炎症を起こしたものを逆流性食道炎と呼びます。胃には胃液が自らの胃を傷つけることから守る防御機構がありますが、食道にはないため食道炎が起きやすいと考えられております。逆流性食道炎の代表的な症状は胸焼け、胃もたれ、胸やのどの不快感、げっぷ、酸っぱい液体の込み上げてくる感じです。内視鏡にて食道の粘膜のびらんや潰瘍、色調変化などを観察し診断します。胃酸を抑える薬の投与により症状を緩和することができます。近年、ピロリ菌のいないきれいな胃が増え、高脂肪食の食生活が逆流性食道炎の増えている背景になっていると考えられております。食道裂孔ヘルニア、肥満や前かがみの姿勢も原因といわれております。過食や脂っこいものや甘いものを避けるなど食事の見直しも大切です。」

※早期胃がんの内視鏡治療  磯村好洋先生
「胃がんの治療は、早期がんの場合、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という、口から挿入した内視鏡の先端から電気メスなどの手術器具を出して、がんのある部位の粘膜をはぎ取る治療法で切除できるケースが大幅に増えています。開腹しないため体への負担が少なく、胃の機能がほとんど低下しないのも大きなメリットです。がんの種類、深達度などからその治療法が可能かが決まります。」