大腸がんと大腸内視鏡検査

大腸がんと大腸内視鏡検査

大腸がん、特に早期がんを発見する上で、大腸内視鏡検査は最も信頼性が高い検査法である。
大腸がんの検査法には内視鏡検査以外に便潜血検査と注腸検査(バリウム・レントゲン検査)、CT Colonography、カプセル内視鏡があるが、早期がんの発見においては内視鏡が最も優れた検査である。また、大腸がんは内視鏡で直接病変を観察し、組織を一部採取し、その組織を顕微鏡で確定診断する。大腸がんの診断の上で必要な検査である。

大腸内視鏡における見逃しの少ない観察法
色素内視鏡法が挙げられる。インジゴカルミンという青色色素を少量ずつ粘膜に撒きながら観察する方法。微細な凹凸を鮮明にすることで微小な病変も発見を可能にする。しかし、残念ながら、大腸内視鏡でさえ、肝彎曲部やS状結腸はがんの見落としがあると言われている。対策としては、特にその部位は2回以上ファイバーを往復し入念に観察すること、便潜血検査は毎年行うことが有用と考える。

多くの大腸がんは大腸ポリープから発生する
大腸内視鏡で大腸腺腫を切除することで、大腸がんを9割減らすことができるというデータがある。がん化のポテンシャルを持つ腺腫は可能な限り切除するべきである。とよしまクリニックでは「切除すべきポリープは切除する。切除する必要のないポリープは切除しない。」という方針で大腸ポリープ切除を行っている。

大腸がんは早期であれば内視鏡で治療できる
大腸がんは早期であれば、まず、命に別条ない。また、内視鏡により完治が可能なものも多く、治療の選択肢の幅が広い。

40歳になったら大腸内視鏡を受ける
大腸がんの発生は40代から急増し60代でピークを迎える。スクリーニング大腸内視鏡における、大腸腫瘍(腺腫とがん)の発見率は40歳代で43%、50歳代で58%、60歳代で68%(*)である。40歳になったら大腸内視鏡検査を受けましょう。
(*)2011年とよしまクリニック集計

ピロリ菌についての最近の知見

日本消化器病学会雑誌
2012年1月号より

積極的な除菌による胃がん予防を実行すべき時代に入った
効果的な胃がん予防、新規感染防止のため成人後、就職・結婚などの機会に、早期にピロリ菌検査を行い、感染者には除菌を行うよう勧めるべきである。

消化性潰瘍患者のピロリ菌感染持続群の胃がん発生率が年率0.70%に対し、除菌成功群の胃がん発生率が年率0.23%と有意に低い。
消化性潰瘍で除菌をした患者で、診断後1年以内に除菌をした群と、1年以降に除菌した群では、早期の除菌群が胃がん発生率を低下させる。

ピロリ菌除菌治療による胃がん予防効果は胃粘膜萎縮の進展しない早期の段階で除菌するほど効果的である。解説:ピロリ菌は感染の初期段階では、感染は前庭部が主体で、前庭部胃炎のために高酸状態になり、十二指腸潰瘍が引き起こされる。感染を放置すると感染は胃体部に広がり、胃体部胃炎から、胃潰瘍の発症や、胃がんの発生母地である胃粘膜萎縮が進行すると推察される。胃粘膜萎縮の進展はピロリ菌除菌により阻止することが可能である。早期の除菌が重要であるが、萎縮の進展した段階で除菌治療を行っても、胃粘膜萎縮の進展を防止し改善する可能性はある。

ピロリ菌除菌は感染源の減少による新規感染の防止という意義がある。解説:ピロリ菌非感染者では、胃がんのリスクはほとんどない。胃がんを撲滅するには新たなピロリ菌感染者を減少させるのが良い。そのためには感染源となる保菌者を減少させることが重要。ピロリ菌は経口感染であり、戦後の不衛生的な時期では水系感染による伝搬がおこっていただろう。現在は、上下水道が整備され、衛生環境が整っており、主たる感染ルートは乳幼児時期に、近親者、両親、特に母親からの口口感染と推測されている。感染源となるピロリ菌保菌者を除菌することは、子供への新規感染を防止する意味においても有効である。

ピロリ菌の除菌により胃がんの発生リスクは軽減することは確実であるが、そのリスクは完全に消失するわけではない。除菌成功者においても定期的なフォローアップが不可欠である。